阿部共実『月曜日の友達』感想 ネタバレなし
阿部共実の『月曜日の友達』を今更ながらに読んだ。
なんで今更読んだかっていうと、ある人がめちゃめちゃ「いい」漫画だと言ってたから。
それを聞いて正直、ほんと?って思った。それは僕が『空が灰色だから』を読んで以来、この人の作品に手が伸びなくなっちゃってて、どうしても空灰のイメージが強かったから。
空灰自体はかなり人気があるし、実際面白い作品だとは思うんだけど、読んだ当時は受けつけない何かがあった。
でもたまにある明るい日常のエピソードはとても好きで、この人が本気でそういう方向の作品を描いたら絶対大好きだろうなと夢想したりもした。
まあそんなこんなで、阿部共実のイメージを払拭するべく、又、阿部共実の陽の部分多めの作品ならばと手に取ったのだ。
結論から言うと読んで大正解だった。
見事に僕の中の阿部共実は空の彼方へ飛んで行ってしまった。それほどまでに見事としか言えない物語だった。
僕と同じ感じで、空灰しか読んでない人結構いると思うんだけど、そういう人は是非読んでほしい。
少し作品の話をすると、この作品はこれ以上ない「ガール・ミーツ・ボーイ」の物語だ。
主人公である水谷茜は中学生になり、「みんな」が変わっていくことに戸惑っていた。流行りの話題、朝の集会、恋愛...。自分だけが変わらないことへの不安と焦燥をいやでも自覚する月曜日。それが嫌いだ。そんな彼女はあるきっかけから、いじめられっ子の月野透と毎週月曜日の夜に学校で会うことになる。
粗筋はこんな感じだ。
この作品は中学生という誰もが通る過程の中で、少年少女の感情の機微を本当に丁寧に描き切っていると思う。何気ないようでいても彼ら彼女らの物語は進行していく。
読者は水谷茜の視点から物語を見ることになるから、いつも彼女の感情はダイレクトに読者に伝わる。それが時には心地よく、時には苦しくもある。読んでいくととにかく気持ちが揺さぶられる。
水谷茜のモノローグの多さなどマンガに対して挑戦的な試みや、幾つもの印象的なシーンもこの作品を彩っている。
誰もが経験した筈の中学生を描いた作品だからこそ、受け取り方が人それぞれ違うマンガだと思うし、伝わりすぎる感情は時に棘になって僕らを襲ってくる。
でもこの作品が素晴らしいことは間違いない。
色んな人に読んでほしいマンガだと思う。
あと、amazarashiがこの曲のテーマソング作ってるからそっちも聴いてね。めっちゃいい曲。